事例概要
金沢赤十字病院は、システム更新のタイミングでインターネット分離の採用を計画。2021年1月から運用を始めた新病院システムにはジェイズ・コミュニケーションのインターネット分離ソリューション「RevoWorks SCVX」が導入され、電子カルテ端末からインターネットにアクセスできるようになった。これにより、医師や看護師、職員は診療や業務の最中にその場で情報検索ができ、利便性が大きく向上している。
業務に支障をきたしかねないインターネット接続端末の制限
金沢赤十字病院(以下、同院)は1925年に日本赤十字社石川県支部産院として発足し、現在、金沢市南部や西部、野々市市を中心に地域に密着した医療を提供する病院である。同院は「『思いやりの心』をもって、『信頼される医療』を提供し、『地域に貢献』します」を理念に、急性期病棟、地域包括ケア病棟、回復期リハビリ病棟、訪問看護ステーションを設置、入院から退院までの切れ目のない医療を提供している。また、糖尿病・腎センター、消化器病センター、骨関節・脳血管リハビリテーションセンターで質の高い医療を提供し、患者総合支援センターを窓口として、患者およびその家族などをサポートしている。
同院では、医療機器主導によるIT化を進めてきた。その結果、放射線科のレントゲン装置、消化器科の内視鏡装置、さらに医事システムにもそれぞれ専用のサーバーが設置されている状態だった。「2014年の電子カルテシステム導入で院内のIT化が完結したのですが、サーバーは部門ごと、用途ごとにバラバラに置かれていたため、故障していても気づきづらい状態でした。加えて、申請書類のダウンロードや情報の検索などでインターネットの利用が増えてきていたのですが、アクセスできる端末が限られ、医師の診療や職員が業務を行う上で、大変不便な環境になっていました」と同院 事務部 企画課主事佐野 文哉氏(以下、佐野氏)は語る。
2016年当時、医事課には10人ほどの職員がいたが、インターネットにアクセスできるPCは2台しかなかった。そのため、職員は交代でPCを利用する必要があり、調べたいことがあってもすぐに利用できないことも多かった。「自治体もホームページに情報を載せるようになり、インターネットで調べることが多くなりました。医療費に関する申請方法は自治体によって異なるので、その自治体のホームページで確認、最新版の書類をダウンロードする必要があるので、今から思えば不便でした」と同院 事務部 企画課主事 岩田 倫子氏(以下、岩田氏)は振り返る。
仮想デスクトップとは大きな差、低コストでの導入を評価
そこで同院では、システムの更新にあたり、サーバーを仮想化して集約するとともに、インターネット分離の仕組みを取り入れ、電子カルテシステムの端末でもインターネットに接続できるよう計画し、2018年から着手した。サーバーは診療系の複数の部門システムとの仮想化による統合とクラスタ構成を要件に入札を実施した結果、デル・テクノロジーズ社の製品を導入することにした。「サーバーはオールフラッシュ構成で、重複排除ができるモデルを提案しました。例えばデータが10TBあったとしても、重複排除機能でストレージに格納すると3TBになるという当時としては最新の技術を採用した製品でした」と当時担当していたデル・テクノロジーズ株式会社 公共営業統括本部 ヘルスケア営業部アカウントマネージャー 今井 秀博氏(以下、今井氏)は説明する。
医師や看護師、職員からのもっとインターネットを使える環境にしてほしいという要望に応えられるよう方法を検討していたところ、近隣の白山市の病院でジェイズ・コミュニケーションのインターネット分離ソリューション「RevoWorks SCVX」(以下、SCVX)を導入していると聞いた。あわせて他の仮想デスクトップインフラも候補に挙げ、比較検討することにした。「中規模の病院なので、導入と運用にかかるコストを抑えることが大前提です。その上で、新しい製品の導入時にはそれまでの使い勝手を維持したまま、各部門の要望に応えなければなりません。それにどう対応していくか、なかなか難しい判断が求められました」と同院 事務部 企画課長 喜多 秀人氏(以下、喜多氏)は語る。
そして、費用面や使い勝手などを比較した結果、SCVXの導入を決定した。仮想デスクトップと比べて費用面で大きな差があり、非常に低いコストで安全にインターネット接続が可能になることを評価した。
「今まで、患者の個人情報を絶対に漏えいさせないというセキュリティ上の観点から、電子カルテ端末はインターネットに接続しないことが大前提だったので、タブレットなどの端末を増やしてインターネット接続ができる環境を整えるしかないと考えていました。最初にSCVXの話を聞いた時は本当に大丈夫かと不安に思いましたが、詳しい説明を受けて、これなら安心して電子カルテ端末からインターネットに接続できると考えるようになりました」(喜多氏)。
医師と看護師、事務職員、薬剤師、管理栄養士が自由にインターネットを活用し、業務効率が向上
2020年10月、デル・テクノロジーズ社のサーバー上にSCVXの導入作業を開始し、3カ月ほどで構築が完了した。2021年1月、分散していたサーバーを仮想化して集約させ、インターネット分離を実現した新病院システムが稼働を開始した。SCVXによって、電子カルテ端末400台から安全にインターネットに接続できるようになった。「はじめは電子カルテの端末でインターネットに接続できるということが信じられませんでしたが、インターネット分離が実現したことで調べたいことをすぐに検索できるようになり、本当に便利になりました。ブラウザも普通のPCとの違いを全く感じることなく、自然に使うことができています」(岩田氏)。
従来は3カ所の診察室でインターネット接続用のPC1台を共用で利用する状態だったが、現在は電子カルテ端末からアクセスできるため、医師と看護師が効率的に診療できるようになった。また、管理栄養士や薬剤師の業務においても業務効率が大きく向上した。「管理栄養士は電子カルテを見ながら患者に栄養指導します。その際、外食時のメニューやコンビニで買う弁当などもインターネットでカロリーなどの栄養成分表示を確認しながら、アドバイスできるようになりました。また、薬剤師も患者が飲んでいるサプリメントなどを調べて参照しながら、病院で処方する薬についての服薬指導が可能になりました」(佐野氏)。
同院では、今後もSCVXでセキュアにインターセットへのアクセスを行いながら、地域と連携した患者を支える医療の一層の強化を図っていく考えだ。
社名
金沢赤十字病院
所在地
石川県金沢市三馬2-251
開設
1925年
院長
寺﨑 修一
病床数
一般病床262床
診療科
内科・呼吸器科・循環器科・消化器科・外科・肛門科・整形外科・産婦人科・小児科・眼科・脳神経外科・泌尿器科・皮膚科・放射線科・麻酔科・リハビリテーション科
http://kanazawa-rc-hosp.jp/