事例概要
日本赤十字社で唯一の周産期医療に特化した施設である東京かつしか赤十字母子医療センター(旧葛飾赤十字産院)は、2021年6月に開設する新病院の建設を進めてきた。
日本赤十字社の各施設は2022年3月末までに全社統合情報システムの整備が求められる中で、低コストかつ安全なインターネット接続を可能にするため、仮想ブラウザのインターネット分離ソリューション「RevoWorks SCVX」を導入した。
新病院建設にあたり、セキュアなインターネット接続を検討
東京かつしか赤十字母子医療センター(以下、母子日赤)は1953年に葛飾赤十字産院として開設され、現在では日本赤十字社で唯一の周産期医療に特化した施設である。2021年6月、新築移転した新病院は、病床数104床で、母子が気兼ねなく入院生活を過ごせる全室個室の産婦人科病棟、GCU・MFICU等の重症系ベッドの増床、水害リスクが高い場所でもあるため、有災の際にも診療継続できるよう、非常用発電機や各設備の主装置設備を最上階(4階)に上げている。また、移転地が元々地区図書館だったことから、「葛飾区立にいじゅく地区図書館」が併設されており、児童コーナーのほか、同医療センター院長おすすめの子育てに関する本や乳児向け絵本のコーナーを設置するなど、葛飾区と連携し、母子のための図書が充実した、未来ある子どもたちの知的好奇心を育む環境となっている。
母子日赤は新病院建設にあたり、コストとパフォーマンスのバランスがとれた院内ネットワークの構築を目指していた中、2022年3月末までに日本赤十字社の全施設で整備を求められている全社統合情報システムの導入を検討していたが、このシステムはインターネットに接続する端末毎にセキュリティ対策を行う仕様であったため、セキュリティソフト等のセットアップやライセンス費用でコスト増となってしまう。母子日赤事務部システム担当石井 和正氏(以下、石井氏)は次のように話す。「2020年夏、施設向けの勉強会で、Dellのサーバに仮想ブラウザのインターネット分離ソリューション『RevoWorks SCVX 』(以下、SCVX )を搭載し、電子カルテ端末で運用する手法を知りました。このやり方であれば、安全にインターネットへの接続ができ、セキュリティ対策はSCVXサーバに集約できるため、コストを大きく削減することができると考えました」
機能をブラウザに限定したことでコストを抑制できる点を評価
SCVXについて当初はコスト削減面を評価していたが、より詳しい情報を元に検討すると、Dockerコンテナ方式でセキュリティも非常に高く、ブラウザの動作速度も高速であることがわかった。さらに院内ネットワークも最新になるので、ユーザーがストレス なくインターネットへアクセスできるようになるのでは、と考えた。
「今までの情報系システムの環境をそのまま全社統合情報システムに移行すると、運用費用が大きく跳ね上がってしまいます。そこでコストを抑えるために、情報系システム全体を仮想化し、そこにセキュリティ対策の基盤も載せるという提案をしました。業務系の ネットワークを分離させれば、セキュリティを担保することができると話しました」とSCVX導入を担当したACMOSソーシングサービス株式会社(以下、ACMOSソーシングサービス) SI事業部 事業部長 古賀 明人氏(以下、古賀氏)は説明する。
さらに業務系システムだけでなく、医療系システムも仮想化することで、サーバ台数の他周辺機器や電源なども減らすことが可能になり、運用コストも大きく縮減できる。
母子日赤では15台あった医療系システムのサーバのうち、8台を仮想化することができた。
「新病院は4階が管理部門になっていますが、サーバルームのスペースが狭く、すべてのシステムが物理サーバだととても収納しきれません。仮想化をすることで、SCVXを初めとする業務系システムと医療系システムを集約することができ、余裕ができました」(石井氏)。
ACMOSソーシングサービスは、コスト削減を最優先した上で、各赤十字病院の要求に沿って、インターネット接続環境を提案している。母子日赤のように、活用できる既存資産がなく、電子カルテ端末からインターネット分離で安全にインターネットに接続する病院には、SCVXを推奨している。SCVXはブラウザだけに機能を限定しているため、他の仮想デスクトップ製品と比べコストが圧倒的に抑えられ、メリットが大きいことから最終的にSCVXの導入を決定した。
短期間で導入、ユーザーの操作も容易
2021年6月1日の新病院オープンと共に、SCVXの運用が始まった。SCVXによって電子カルテ端末からセキュアにインターネットへの接続が可能になり、電子カルテ端末とインターネット接続端末を別々に持つ必要がなくなった。さらにライセンス利用料は同時アクセス方式のため、物理端末の台数分を全て購入する必要はなく、利用料を大幅に削減することができた。2021年7月現在、母子日赤の登録ユーザー数は70、同時接続契約ライセンス数は50で、1日の同時接続利用数はおおよそ35から40で推移している。
今回、新病院開設にあわせて新たに導入した医療系システムもあり、医療スタッフはそちらの使い方に慣れることが最優先になった。さらに開設直前にSCVXの稼働を開始するスケジュールだったため、事前の手順説明に時間を割くことができなかった。しかし、医療スタッフはそれぞれSCVXの手順書を参照しながらスムーズに対応できたという。「添付ファイルのダウンロードもファイル無害化機能を使うことになり、今までのメールソフトとは大きく使用方法が変わったのですが、問合せもすぐに落ち着き、SCV X の運用も順調です」(石井氏)。
今回、SCVXに決まったのが2021年3月。6月の病院オープンまで極めて短期間で導入作業を進めなければならなかったが、支障なく稼働させることができた。「短期間で運用開始できたのは手順書に沿った作業で導入が可能だったSCVXだからで、他のソフトウェアではもう少し時間がかかってしまいます。様々なパッケージソフトの導入に携わってきた経験から見ても、SCVXは導入作業がしやすい、極めて秀逸なソフトだと思います。他の赤十字病院で導入する際にも、導入の目算が立てやすいので助かります」(古賀氏)。
母子日赤では今後、オンライン会議にも対応する仮想ブラウザ「RevoWorks Browser」の導入も視野に入れながら検討を進めていく考えだ。
社名
東京かつしか赤十字母子医療センター(旧 葛飾赤十字産院)
所在地
東京都葛飾区新宿3-7-1
開設
1953年
院長
三石 知左子
病床数
104床(産婦人科一般病棟65床、MFICU 3床、NICU12床、GCU24床)
診療科目
産婦人科・小児科
東京都地域周産期母子医療センター
認定:平成9年10月
https://katsushika.jrc.or.jp/